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zoom RSS 初冬の雨の風景

<<   作成日時 : 2012/12/01 10:47   >>

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日本のどこにいても冬の初めには冷たい雨が降る。
沖縄の周辺部はどうか知らないけど。
冬が近づいてくるときは皆は気が重くなると言うが、私はそうは思わない。
あまり憂鬱な感じがしないのだ。

雪国の人間の冬の楽しみと言えばウインタースポーツである。
雪の降らない地方の人たちは、スキーはスキー場じゃないと出来ないと言う固定観念があるかも知れないが、坂さえあればどこでも良い。いつ、どこでも坂さえあれば滑る。猪木イズムの信奉者ではないが。
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実際、堤防の斜面を使って滑ることは日常茶飯事だったし、近隣の丘や山、果ては寺の屋根を使って半狂乱なまでにスキー遊びをした。
大人達は来るべき雪囲いの準備や、積雪のした時の除雪作業の大変さを思い憂鬱になるのに反比例して、何の苦労も知らない子供達は雪が降るのを心待ちにしている。

そんな訳で遠くの山の頂から次第に白いものが山裾まで降りてくる都度、子供達の歓喜の声は高まり大人達のため息は深くなっていく…。

そして子供は知らないうちに成長していくもので、身体が大きくなると持っているスキー道具もそれに沿ってグレードアップしていく。最終的には自分の貯めたお小遣いでお仕着せの道具から、自分の好みの格好いいモデルの大人スキーを手に入れるのが恒例だった。
謂わば雪国の子供達の通過儀礼のようなものかも知れない。

かく言う私にも電車に乗って大きな街の有名スポーツ店に行き、自分の道具を手に入れるというガキの心を甚く高揚させる時が到来したのである。

冷たい雨が降ったり止んだりしている天候の中、愛用のスキーブーツをバッグに入れ、入念に下調べしたモデルをメモした紙を握りしめ、スポーツ用品店の中に入る。そこには私と同じ目的で入店したらしき高校生達が沢山いた。
その中に中学からの同級生のM君と彼の父親の姿があった。
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私は彼と軽い挨拶を交わして、店員との交渉に入った。交渉と言ってもカタログが破れるくらい比較・検討したものである。本人の思い入れとは裏腹に、モノの40分程度で全ての手続きを終了したのは当然の帰結であったろう。
その後、若干の寂しさを感じつつ店を出ようとしたのだが、そのM君が声をかけてきた。
「帰りはウチのクルマに乗ればいい」と。

「遠慮するのも子供らしくないな」と都合の良い時だけ子供になる私は、断る理由もなく彼の家のクルマに乗って家に帰ることになった。
彼の父親は饒舌な方ではなく、私とだけでなく自分の息子とも親しげに話す様なタイプでは無かった。帰りの車中の重い空気が予想された。

彼と私はクルマまで真っ直ぐ歩いたが、彼の父親はどこかに寄り道した様で遅れて駐車場にやってきた。
そして紙袋の中から無骨な手で、鯛焼きを一つ渡してくれたのである。
その手が力仕事をしている大人の大きな手だった…。

冬の近いこの季節が来ると、よくこの光景を思い出す。
自分だけの道具を手に入れた高揚感と、彼の父親の手と鯛焼きの甘い味を。

この季節は決して憂鬱ではない。
冷たい雨の風景を見る度に、すごく懐かしい感じがする。


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