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zoom RSS 夜更かしの素  池上 司『雷撃深度十九・五』

<<   作成日時 : 2014/02/16 23:30   >>

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この間からの休日は外に出てゆっくり街を歩く事が多かった。
そのお蔭で本屋を見つけては色々と物色して、益々『積ん読』の本を増やしている昨今である。
でもその中でも興味を惹く本があって、ウィスキーのお伴に拾い読みをしているうちにズッポリはまり込んでしまった。

一時期に福井晴敏氏の書いた小説が『ローレライ』や『戦国自衛隊1549』『亡国のイージス』と次々に映画化され、それぞれに人気を博した様である。その一連の作品に続いて福井氏が脚色を行い、若手俳優の中でも人気のある玉木宏を起用した『真夏のオリオン』も結構ヒットした作品だが、この本はその映画の原作となっている。

以前の記事で『小説の主人公とドラマの主演の顔が重なるのが嫌だ』と言っていたにもかかわらず、言っていることが終始一貫していないじゃないかという指摘もあろうかと思う。
でも福井氏の脚色が凄すぎて、原作を読んでも映画のキャストと誰一人重ならないのは幸甚というものであろう。しめしめ。
画像
前記福井晴敏氏がこの手の小説を出すまで日本の戦争物といえば、妙に辛気くさかったり極端にメッセージ性の強いものばかりだったのだが、この作品はそんな理屈抜きにエンタテイメントとして読めてなかなか楽しかった。
そんな感想を書くと左の方面からは「戦争で人が死ぬ話を面白いとは不謹慎だ」とお叱りを受けたり、右の方面からは「史実と違った嘘話を喜ぶとは何事か」と叱責されるかも知れない。
でも私は敢えて言ってしまおう。この小説は面白い。

米海軍重巡洋艦『インディアナポリス』が帝国海軍伊号第五八号潜水艦に撃沈されたという事実をベースに、同じ時間軸の上に双方の立場から交互に物語が進んでいく手法で、息詰まる巡洋艦対潜水艦の対決をスリリングな展開で描いてある。
そしてこの物語のサスペンス性を高めているのは、『インディアナポリス』が米本土から原子爆弾をテニアンまで運んだという史実と、3発目の原子爆弾を積んでマッカーサーの待つレイテ島に向かうという虚構を取り混ぜている部分であろう。

登場人物も米海軍の艦長は海軍サラブレッドのエリートであり、また一方の潜水艦を指揮する予備役少将は山本五十六から閑職に追いやられた有能な戦術家で、緊迫した人間対人間の頭脳戦である状況を表現していて実に面白い。

あとがきで作者も「内容の少なくとも半分以上は歴史的事実であり、残りの部分のどの程度までが推測か虚構かは、読者の判断にお任せしたい」としているが、米海軍の内部の綱引きや潜水艦乗りの心理もきちんと描かれていて、つぶさに調べていけば色々と突っ込みどころはあるにしても、自然に虚実混交の世界に引き込まれて行く。

日米双方の登場人物の描かれ方にもう少し厚みがあった方が良いという方もいる様だが、この位の背景の厚みの方がリズム感も良くスムーズに読めて良いのだろうと思う。
物語の終盤にかけてのスリリングな盛り上がりは結構楽しく、知らない内にすらすらと読了して居りました。

読了感は主人公である永井予備役少将の人柄から来る爽やかさに浸れて、こちらも非常に後味が爽やかで余韻も長く気持ちの良い印象が残る。

因みにこの作品は池上司という小説家のデビュー作なのだが、実は『四十七人の刺客』作者の池宮彰一郎氏のご子息であり、たまたま偶然に戦史に詳しいところを見出されてデビューしたという。

私はこの本で池上司という作家に初めて触れたが、また別の作品も読みたいと思わせる良いエンタテイメント小説だった。

蛇足だが私は元々不謹慎な人間である。



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは! 今回は潜水艦対巡洋艦の戦いですね。巡洋艦側としては潜水艦のいそうなところへ水雷を落としていく感じでしょうか。一方、潜水艦側としては巡洋艦が見えていて、魚雷を発射できますので、かなり潜水艦が有利に思えます。
作者のことは知りませんでしたが、面白そうな本ですね。ちょっと読んでみたくなりました。
只野乙山
2014/02/17 11:41
乙山先生 コメント有り難うございます。

この当時の日本の潜水艦は、現在のもののように高性能ではなかったようです。推進速度もかなり遅く『ドン亀』と言われていたという事です。
つまり小説の中では物量に優る米巡洋艦の圧倒的優位で進んでいきます。

小説の書き方としては一時期流行った海堂尊の『チームバチスタの栄光』と同様の手法だったりします。
戦争物は好き嫌いはっきり別れますが、これは何の事前知識が無くても楽しく読み進められます。

何と言っても戦記物が余り得意でない私でも、知らない内にのめり込んでしまうくらいですから。
Nori
2014/02/17 12:56

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