この辺りの者でござる…

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zoom RSS 思い出したように(ほんとに思い出した)

<<   作成日時 : 2017/01/26 07:00   >>

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私は余りテレビを見ない。
私の嗜好に合う面白い番組が少ないというのが要因の一つだろう。何と言っても歳を取ってくると若い男女の恋愛模様の話など、見るに堪えないというか何か尻がムズムズして落ち着いて見ていられないのである。
爺ィ・婆ァが時代劇やサスペンスにハマるのも判るような気がする。

そんな中で何かの合間に見た番組宣伝が私の気をひいた。
それが『プロフェッショナル・仕事の流儀』という番組だった。何と言ってもサブタイトルが『平成の絵師・幻の色に挑む』というから、普段法外な視聴料を踏んだくって行くNHKが私に「どうぞ見て下さい」と言っているようなものだと感じた。
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文化財修復に関わる人間は京都にある『川面美術研究所』という名を一度は聞いた事があるはずで、創業者の川面稜一氏は彩色復原の第一人者であり、清水寺・知恩院・西本願寺・北野天満宮・二条城など京都市内にある誰もが知っている文化財全てに関わった人なのである。
テレビに登場されていたのは川面稜一氏のご息女で後継者の荒木かおりさん。

この方の凄さは以前記事に書いた永観堂の彩色を完全復原した件で、黒漆で塗りつぶされていた梁が極彩色で彩られていた事を解明し、その頃とほぼ同じ図柄や色づかいを再現したという一事を見れば容易に想像出来るだろう。

ここ数年継続して行われている清水寺の修復工事の中で、番組では荒木さんが手掛ける阿弥陀堂の台座に施された彫刻の彩色を取り上げていた。以前の記事にも書いた様に実際に復原作業に入るには入念な事前調査を行うのであるが、番組の中でその辺りも丁寧に紹介していて修復というのは簡単ではない事がちゃんと説明されていたようである。
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事前調査では僅かに残った下地の胡粉を採取して成分分析を行うのであるが、数種の金属成分がある場合はどんな色合いだったか、色の重ね方はどうであったか非常に迷うところなのである。そして詳細がキッチリ判明しないと先には進めない。復原と言うからには元の姿と違ったものには出来ないからだ。
テレビでやっていたように本来そこにあるべきでない色の成分が検出された場合、他の文化財建造物ばかりでなく壁画・絵画などから類似例を拾っていく事になる。

御存知のようにこの彩色復原には岩絵具(いわえのぐ)を使用する。簡単に言うと鉱石などを砕いて膠(にかわ)に混ぜたもので、砕く粒子の大きさが違うだけで色合いが変わるほど取り扱いが難しいものなのだ。例えば同じ朱色でも数種類もあり、粒子の細かさを含めれば選択肢は無数に広がっていく。
その中から一色をセレクトして色合いを決めていくのだから、手間のかかる事夥しいのはよく判って頂けるだろう。
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実際に彩色していく時は当然のことながら、復原原図を描くにも細心の注意を払う。当時の絵師達の技法やら筆遣いのクセまで再現しなくてはいけないのだから。入念に作った下地に色を入れていくときにも、塗る度に様子を見て検討を重ねながら作業を進めていく。そして文字通り以前のものと『寸分違わぬ』ものに仕上げて、ようやく復原と認められるのだ。
この事はテレビで荒木さんが「昔の人がこれ(復原されたもの)を見て、これはこの通りなんだよと言ってくれるものを目指す」と言われていた言葉に符合する。

いやぁ良いテレビを見たなあと感動すると同時に、以前彩色復原の記事で「詳細は後日記事にする」と言った事を思い出したのである。
それで思い出したように(実際思い出したのだけれど)記事を書いてみました。
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という事を踏まえて前回の記事に書いた、三重県知事若しくは県庁役人の発言の頭の悪さがより際立って理解して頂けたのではないかと。
「他の代替素材が存在してるから必要性が感じられない」とか「粗悪でも良いから輸入したものを使え」とか頭の悪さをアピールしているとしか思えない。

麻の栽培の可否は別として、この発言だけは絶対に看過出来ないものなのだ。
本来的に別のものや粗悪なものを使うという事は、『ペンキを使って彩色を復原する』とか『建造物に悪影響を及ぼす物質の入った塗料で復原する』と言っている事に等しいのだから。

しつこいようですが、三重県の首長やら役人やらの認識の程度に腹が立ったものですから。

馬鹿に対して「馬鹿」と言ったところで、何も解決しないだろうなぁとは思うけれど。







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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
まあ、本当につまらない番組ばかりですね・・・ほんとうに。
けれども、これが我が国の文化の水準なのだとかみしめねばなりません。テレビ局とはいえ、それを見る視聴者の水準を超えることは出来ない。

でも・・・私もその我が国の住民。つまらないつまらないとぐちりながらも、それこそつまらぬバラエティーばかり見ています(ドラマは…見ていられない)。
三友亭主人
URL
2017/01/28 08:36
三友亭主人さん コメント有り難うございます。

ウチの奥様はコタツに入って寝転びながらドラマをよく見てるのですが、私はBGMとして見るでもなく聞くでもなく流れるのに任せてます。
特にNHKなんぞは法外な金を取るクセにロクな事をやっていないので腹が立つんですが、今回のこの番組は結構評価しています。

最近見てるのが『サラメシ』と『グレーテルのかまど』ですかね。
ドラマでは『下町ロケット』とか『ルーズヴェルト・ゲーム』なんかはよく見てました。モノを作っている人達にシンパシーがあるのだろうと思いますけど。

まあ恋愛モノはからっきし駄目ですねぇ。
底抜けに明るい奴は何とか我慢できるんですけどね。
Nori
2017/01/28 09:05
> 他の代替素材が存在してるから必要性が感じられない

 酢酸はまともな食酢の代用にはならず、カニ風味かまぼこも所詮本物のカニにはかないません……というのはちょっと不適切かもしれないけれど(笑)、なにごとも実用一点張りでは味気なく、文化とはいわば余計な一手間であり、コストがかかるから一種のムダでさえあるのかもしれませんね。

 昔は鉄道の旅をすると、弁当といっしょに買ったお茶が粗末ながら焼き物でした。それがいつの間にかプラスティック製の野暮な容器に変り、おまけに妙なにおいがするのには閉口したものです。

 なんでも用さえ足りればいいというものでないことは確かだと思います。

 TVについてはみなさま同様、ほとんど聞き流しです。最近はトランプさんの人物について、いろんなコメンテータが言いたい放題のようですが、自分の国の政権についてまともな意見もいえないくせに、余計なことをいうなよ……
薄氷堂
URL
2017/02/11 21:39
薄氷堂さん コメント有り難うございます。

建造物の彩色を岩絵具で修復するのにも理由がありまして、岩絵具だと建造物本体に深刻なダメージを与えずに修復できるという事なんです。
仮にペンキなんかを使ってしまうと長持ちはするでしょうが、次に修復する事が殆ど無理になるから使用しないんですけどね。

まあ麻の栽培については悪用する奴らが居て、またそれを合法化させようなんて馬鹿な事をやってますから反対も多いのは当然です。ただ合法的に栽培しようとする人達に馬鹿な理由を語るなと言いたいだけなんですけどね。

それと仰有るように駅弁のお茶の容器は私も同感で、ペットボトルの熱い奴にも同じ感覚があります。しかし最近は人件費を削るために車内販売自体無くすという方向なのは困ったものだなと。
折角の列車旅行なのに風情が無いなあと思う昨今です。

しかしテレビのコメンテーターというのはいい加減なものですよね。自分たちは何の責任も無いから色々放言するのでしょうし、その発言にも責任を持たないのだから、どうしようもない奴らだなと思ってます。
Nori
2017/02/12 09:54

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