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zoom RSS 飲む事の出来ない酒 ジョニーウォーカー・レッドラベル

<<   作成日時 : 2013/08/30 07:00   >>

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子供の頃、親父が棚の奥にしまい込んで決して飲まなかった酒がある。
その酒は親父の最愛の教え子だった人から贈られたものだった。

実はこの酒を買ってきた時は記事にする事を何も躊躇しなかったが、飲んでいて色々と思い出す事があって若干ためらいながら書いている。
そんな訳で多少感傷的な表現になる事を諒とされたい。

その方の事を当時私は『お兄さん』と尊敬と親しみを込めて呼んでいた。
その頃の親父は中学校の教師をしており、時折勤務先の学校に行く事もあって中学生のお兄さんお姉さん達に遊んで貰ったりしていた。そして卒業生の人たちが家に遊びに来てくれる事もままあった。
画像
考えてみれば親父は当時の生徒さん達に慕われる位の良い教師だったようである。
現在のヘロヘロ具合から見れば、にわかには信じられない話ではあるが。

そんな訳でそのお兄さんは商船高校に進学した後に海運会社に就職し、大型のタンカーに乗って海外の航路に出る事が多かった。そして年に一度地元に帰る度に我が家を訪ねてくれるのだった。
そんな時にも私は親父の横でゴロゴロと横になりながらテレビを見ていたりしていたから、途轍もなく生意気で邪魔なガキだと思われたに違いない。
でもそんなクソガキでも色々な外国の面白い話には興味があって、いつの間にか親父の横にちょこんと座って黙って土産話に聞き入るようになった。

その後白地に紺色のラインが入っている船のクルーの制服のまま訪ねてこられた事があって、優しくにこやかな顔立ちの人なのに凄く凛々しくて格好良くて私の憧れの対象となった。
そしてその時には余り時間が無くそのまま船に乗るのだと言う事でゆっくりお話も聞けなかったのだが、帰り際に「また今度な」と言いながらクソガキの頭を撫でてくれたのだった。

その日から私は将来お兄さんのように商船高校に進学し、海運会社に就職して外国航路の船に乗るのだと決心した。それから事ある毎に色々な船に興味が湧いてプラモデルを作るやら船の本を読み漁るやら。
親父もそんな私に「あいつみたいに船に乗るのも良いな」と煽り立てるのが常だった。

しかしある日親父に電話があって、お兄さんが船から海に落ちたのだと伝えてきた。
その日は狭い海峡で嵐に遭遇したらしい。お兄さんは船の舳先に立ち、旗でブリッジに信号を送っていたのだが、他のクルーが気がついた時にはもうそこには居なかったという。

親父は連絡してくれた人からかなり詳しい話を聞いたようで、「あいつが行方不明になった」とぽつり呟くとそれきり黙ってしまった。子供だった私は何の遠慮もなく「もう見つからんがかな?」と今思っても残酷な言葉を発してしまった。
「見つかってももう生きてはおらんやろな」と答えて親父は家の奥に消えて行った。

それ以来親父はその事について触れなくなってしまった。
そして私も商船高校に進むとは言えなくなってしまったのだった。

親父はお兄さんがくれた『ジョニ赤』に手をつける事無く、ずっと棚の奥にしまい込んだままにしていた。それは親父の弟である放蕩叔父が「もったいないから飲もう」と何度誘っても決して飲まなかった事から、ボトルを見るのも辛かったのか若しくは飲む事が出来なかったのだろうと推察する。

今までこのスクエアなボトルと斜めに貼られたラベルに親近感があったのに、不思議と手を伸ばさなかったのはこんな理由があったからなのかも知れない。
恥ずかしながら今回初めて口にしたのだから。

お兄さんの事は覚えていてたまにしみじみ思い出したりするのだけれど、この酒の事はハッキリとは覚えていなかったからこそ酒屋で手にした事は疑いない。言い訳がましい話だけど、飲んみてラベルをしげしげと眺めてるうちにこれを思い出したのだ。

それ故冷静な批評など出来る訳がない。
それでも敢えて言うならば、ピート香がしっかりあって飲み応えのあるとても良い酒だと思う。そして加水した時には甘い香りが立ち上がり、飲み口もやんわり甘さが膨らむ上質な酒だと思う。

今我が家ではラフロイグ10年を常備するようにしているが、今後これを常備していこうかなと考えている。

その人の事を忘れない事が何よりの供養になると禅の師匠が言っていた。
ならばこの酒を常備するのも良い供養になるのではないだろうか。

今回は風味とは別の話をクドクドと書いた事をご容赦下さい。



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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
・・・くしくも、「赤」は今我が手元に・・・

何時、飲もうか・・・何時、飲もうか考えているときに、こんな文章を読んだら、なかなか飲めなくなっちゃったじゃあないですか(笑)。

何てのは冗談ですが、昔はこんな酒、私の手元にあるようなお酒ではなかったのですが、昨日何の因果か私の手元に・・・

さてさて、何時飲んだらいいか・・・
三友亭主人
URL
2013/08/31 21:20
三友亭主人さん コメント有り難うございます。

おお、ジョニ赤を入手されたのですね。
この酒を飲めなかったのは私の親父でして、私は遠慮無く飲んでますよ。なにか思い出すべき事を思い出し切ったので、純粋に楽しんでます。

ちゃんとピート香があって多少硬質ですが、甘みも柔らかい旨い酒です。
ロックか濃いめの水割りが良いようですよ。

一緒に楽しみましょう。
Nori
2013/08/31 21:34
こんにちは。ジョニー・ウォーカーの赤ラベルですね。これは今千円ちょっと(ときにはそれ以下)で買えるものですが、以前は3500〜4000円ほどしていたものです。仰るようにピート香がちゃんとあり、甘みもあるけれどくどくないもので、スコッチらしいスコッチといえるのではないかと思います。
なので常備すべきスコッチとしては候補に入れていいのではないかと思っています。色々あってどれにしようかな、と迷うときはこれ、とか思って買うこともありますね。
只野乙山
URL
2013/09/01 09:43
乙山先生 コメント有り難うございます。

ジョニー・ウォーカーは黒もなかなか良かったのですが、赤も旨い酒でした。
ロックや水割りならばこっちの方が良いのではないかと思います。
樽由来と思われる香りと余韻を楽しみたい時には黒ですよね。

もうちょっと資金に余裕があればもう一つ上の色のラベルも買えるのでしょうが、今は無理せずにこれを置いておこうかなと…。
Nori
2013/09/01 13:02
はじめまして
四の字硬目と申します。

いつも乙山先生の胸をお借りして
おります 鼻垂れ小僧でございます。
貴殿のブログはよく拝見して 勉強させて
頂いております。m(_ _)m

今回のジョニ赤のコラム、
わたくしにとって
感慨深いものがありました。
改めて
ジョニ赤を手にするきっかけに
なりそうです、
ありがとうございました。

四の字硬目
2013/09/05 22:35
四の字硬目さん 初めまして。
コメント有り難うございます。

歳を取ると過去の事を引っ張り出すのに時間がかかる様になりまして、その辺も含め大した内容でもなかったのでお恥ずかしい限りです。

ジョニ赤は良い酒ですよ。
ちゃんと燻煙香があって味の厚みもある旨い酒です。
この値段あたりの酒の中では一番スコッチらしいものなんじゃないかと思います。

酒というのは嗜好品なのでクセのないものを好む方や、逆にクセの強いものを好む方も居られて千差万別ですよね。
私は自分の嗜好に合ったものを好意的に書いておりますので、余り参考にならないとは思いますが、今後共宜しくお願いします。
Nori
2013/09/06 09:23
お返事頂いて嬉しく存じます。
ウイスキー道は奥が深そうなので
ユルリと極めてまいります。

こちらこそどうぞ 今後とも
よろしくお願い申し上げます。m(_ _)m

四の字硬目
2013/09/06 13:22
ジョニ赤、ついに今日購入して
先程から呑んでます。

世界的ロングセラーは伊達では
ありませんねぇ!m(_ _)m

ストレートからロック水割りまで
全て試しました、
不思議にどれも飽きが来ません。
特に水割りは、そのためらかな
ボディからは想定を超えるたくましい
味わいと飲み応えがあり、貴殿が押して
くださるのがよぉ〜くわかりました。
普段はスコッチ飲む時はストレートや
ロック党のわたくしも、水割りで
こんなに旨い庶民価格のウイスキーは
初めてでした。(乾杯)

なんかすごく トクした気分です。

四の字硬目
2013/09/09 22:29
四の字硬目さん コメント有り難うございます。

おお、ジョニ赤を入手されたのですね。
味の厚みがあるので、水で割っても割り負けしないのがこの酒の良いところですよね。

ちなみに帝国ホテルで銘柄を指定せずに「スコッチの水割りを」と注文すると、この酒の水割りが出てくるようです。

この値段でこういった酒が飲めるのは幸せな事なんだと思います。

1000円スコッチを飲み比べしていて、たまにこういう当たりに出会えるのも面白いモノですよね。
Nori
2013/09/10 11:06

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