この辺りの者でござる…

アクセスカウンタ

zoom RSS 親父冥利といふもの

<<   作成日時 : 2016/01/27 21:00   >>

ナイス ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 8

これも初冬の頃の話になる。
京都へ行っているウチの下の子が二十歳になった。
以前からの約束で「酒が飲める様になったら一緒に飲みに行く」と言っており、私も少なからず楽しみにしていた時機が到来したのだ。
我が家の家訓では、酒の席のお付き合いが出来て初めて一人前と認められる。

そうは言っても誕生日以降にサークルの仲間達と酒を飲む機会があった様で、親父と飲みに行く事が初飲酒という訳でもなかった。ちとその辺りが寂しい気もするが、彼らには真似の出来ない大人の世界をちょっとでも覗かせて、この親父の格の違うダンディぶりを見せつけようという魂胆である。
まあ単純に二人きりで食事をしたかったというのが大半だけれど。
画像

このオヤジは伊達に繁華街をウロウロしていた訳でなく、若造達が入って来られない落ち着いた店を知っていて、旨い料理を肴に親子の会話を楽しむのに良い場所を選ぶのにさしたる苦労もなかった。今まで結構な授業料を支払ってますからな。
そんな訳で年末に仕事で京都に行った時に二人で出かけた。

考えてみればウチの子達は、盗んだバイクで夜の帳の中へ走り出す事もなく、夜の校舎の窓ガラスを壊して廻る事もなく、ある程度の反抗期を無事やり過ごして素直に育っている。
親父の誘いに乗ってくれるというのは、誠に以て冥利に尽きるかなと。
ただ物事に向かう姿勢が少し真面目すぎるというか、肩に力が入っていて「もっと楽にせえよ」と思える事が間々有る。
これは多分に人並み外れて肩幅の広い奥様の遺伝だと思われる。

閑話休題、私達が行った場所はテレビなどで良く見かける祇園白川。石畳の舗道に柳の並木がある件の通りである。店は『しぐれ茶屋・侘助』といって、30代後半のころ京都在住の大学同期の同業者に教えてもらった、京都の『おばんざい』と旨い酒が飲める店である。
画像

私は暖簾をくぐって普段通りにカウンター席に腰掛けたのだが、下の子はいつもサークルの仲間達と行く店とのあまりの雰囲気の違いに緊張している様である。以前は取っ付きにくそうに見えて、一度取っ付いてしまうと非常に気さくな料理長が居たのだけれど、今は若いけれど相当に腕の立ちそうな板前さんであった。
そして若い女将さんがいて客を上手に捌いている。

実はこの時以前記事にもした交流会の立食パーティーの後であり、酒だけで腹六分目になっていて、本来だったら旨い京都の地酒に合わせるべき所を水割りの『新山崎』を頼んだ。
ここに来て日本酒が入る腹が無いというのは一大痛恨事であった。
下の子は梅酒ソーダを頼んだのだが、ここの梅酒はそれだけでも旨いのだ。

「この子が二十歳になったから、京料理デビューさせるために来た」と告げ、豚肉を炙ったものと菜っ葉の炊いたん(関西では煮浸しをこう呼ぶ)を頼む。私は最近料理屋に行くと菜っ葉の炊いたんを良く頼むのだ。何故ならオッサンの舌にとても具合が良いのと、店の味が良く判るからでもある。
この後私はおばんざいの数々を、下の子は仕事をキッチリしてある京料理を堪能したのだった。

考えてみればウチの子供達には偏食の癖もなく、一緒にこうやって食事の付き合いが出来るのは幸せだと思う。以前の記事にもしたが同じ物しか食べられない人間も居て、その季節折々の物を食べるのが一番旨い事を知らないのだから。
と、子供相手に食育の蘊蓄をタレていたら「良かったらシシャモを焼きましょうか」と板長からお誘いが…。
画像

何と凄い事に世間でまかり通っている紛い物のカペリンではない、北海道産の本物のシシャモが入ったのだという。私のつまらない蘊蓄を聞いたのと、子供の京料理デビューには相応しいのではないかと気を使ってもらったのだ。
勿論こんな魅惑的なお誘いを断る訳はない。喜んで「お願いします」と。

そして出されたのが黒い盆の上に塩で水の流れを描き、その流れに2尾のシシャモが泳いでいる見事な一品であった。当然一度その景色を存分に楽しんでから、子供と1尾ずつ頂戴する。姿はまるで旬の頃の鮎の様に美しい。口に入れると非常に香りがあって旨い。板長の塩加減も絶妙である。下の子は普段魚の頭は食べないのに、バリバリと頭から食べていた。
相当に美味しかったと見える。

帰り際に女将が「凄く良い親子関係ですね」と。聞いてみれば彼女もそうだった様だが、世間で親父と娘というのは結構微妙な関係であるらしく、私達の様に二人で食事に行く事など思いもよらないらしい。
親父冥利に尽きるお褒めの言葉でございます。

そしてこの後はちょっとイイ気になって、先斗町のバーでウィスキーの蘊蓄をたれ放題の親父なのであった。




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ナイス
かわいい

コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
思考回路がうちのオヤジによく似ています。親父の習性がよくわかる。うふふ。ただ、うちの場合、金を払うのは僕だった。苦学していたので、持っている時は親父の小遣いより持っていたから。それから、うちのオヤジによる社会勉強は、学生が入るのをビビるようなカウンターしかない生粋の大衆酒場でした。う〜〜ん。いろいろな思い出を甦らせてくれる今回の記事でした。
根岸冬生
2016/01/28 09:39
根岸さん コメント有り難うございます。

以前から「二十歳になったら一緒に飲みに連れて行ってやる」と言ってましたので、本人は楽しみにしていたようです。私には直接言わずに奥様を通して色々話は聞いていまして。
それまで子供と食事に行く場合はファミレスなどが多かったのですが、自分で働くとこんな場所にも来れるんだという事を見せてやりたかったのもあります。

まあ世の中には家庭料理とファミレスのご飯だけではないというのを知らせたかったのもありますし、旬の物を食べるという事を教えてやりたかったのもあります。

まあ記事に書いているほど蘊蓄は語りませんでしたけどね。
ただ「まだ独りで来られる身分ではないよ」と釘を刺す事は忘れませんでしたけど。
Nori
2016/01/28 11:18
いや、これはスバラシイですね。
親父冥利に尽きるとはこのことかと。

ウチはツマが酒を一切呑まないのですが、子どもらは飲酒に多少興味が有るらしく、成人したらば父が常々喜んで出向く呑み屋やBARなる所に連れて行ってあげよう、と約束をしています^^
が、子どもらの食べたい物のリクエストは「おいしい魚の皮」というコアな品目で悩んでおります(笑)
ソレを供する店の選定まで、猶予は4年程ありますが・・
品目が品目だけに、難航しそうです^^;
みりとも
2016/01/28 22:27
みりともさん コメント有り難うございます。

そちらも良好な親子関係の様ですね。
世間では一緒に食事に行くどころか、親父と2人きりになるのが耐えられないという親子関係も多いやに聞き及びますので。
親父の誘いに乗ってくれると言うだけで素晴らしい事だと思います。

しかし「おいしい魚の皮」というのは実にコアなリクエストですね。魚の一番美味しい部位は皮だという食通の人は多いですよ。
そうなるとそれに応えられる店というのは結構限定されてしまうかも知れません。

一番良いのは旬の旨い焼き魚を食べさせてくれる店かも…。
皮だけでなく身もついていますが、皮だけ食べるよりも満足感があると思います。
北海道の『鮭とば』なんかは正しく皮を食べさせる物ですが、う〜ん結構難しいですねぇ…。
Nori
2016/01/28 23:57
「親父冥利」羨ましいです…

自分の親父はほとんど酒が飲めず
一緒に酒を飲んでも嗜む程度

自分は飲めますが
娘がまだ高校生…

先が長い。
ウィスキー初心者
2016/02/09 20:09
ウィスキー初心者さん コメント有り難うございます。

ウチの親父は結構不器用な人間でして、出先で子供達が喜ぶ様な食事というのが判らない事が多かったのです。
そんな訳で子供達には色々と飲み食いに関して、何か思い出を語れる様な機会を作ってやれたら…と思っていた訳です。
まあ、だから折々に外で食事をしたがるんですけどね。

しかし娘さんが高校生ならば、そんなに遠い未来の事ではないですね。ウチのもそうでしたが、高校の3年間はあっという間です。
その時に備えて色々とシミュレーションしておくのも、なんだか楽しいのではないでしょうか。
Nori
2016/02/10 08:45
ご無沙汰でした。実に理想的な親子関係のエピソードですね。情景が浮かびますよ。

自分も遠い昔の一コマを思い出しました。
うちの親父は普段、仕事絡みでない限り殆ど外呑みをしないのですが、ごく稀に学生時代のご友人が来た際には炉端などにくり出し、何故か自分も(当時の年齢如何問わず)連れ出されました。ええ、しっかり相伴しましたともw
その後、曲がりなりにも酒を覚えてからはここぞとばかりに、普段は(懐具合的に)手を出さないものを楽しんでましたなー、親父とご友人の懐古談を肴に。

そんなことが数える程度はあったのですが、不肖の倅を連れ出した意図を当時は知るべくもなく、只、あの頃に初めてのんだ「黒龍」のインパクトとこの数年に何度か口にしたそれは、当然ながら随分感じ方が変わりました。
つっち
2016/02/13 15:49
つっちさん コメント有り難うございます。

つっちさんとお父様の関係もとても良好の様で、実に微笑ましいエピソードですね。
お父様はそのご友人に自分の子供を自慢したかったのではないのでしょうか。何だかその気持ちがよく判りますよ。
でも、これってしたくても出来ない体験だと思いますよ。

うちの子はまだ酒の旨さがよく判らない様で、「もっと大人になったら判るだろうけど、まだ早いよ」と言い聞かせています。

ウチもこれ以降、ぽつりと「美味しいものが食べたい」とか言うようになり、困ったものだなと時折感じてます。
Nori
2016/02/14 12:39

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
親父冥利といふもの この辺りの者でござる…/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる