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zoom RSS 余計なお世話でしょうが

<<   作成日時 : 2017/09/23 12:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 6

この間からブログ復帰についての事はキーボードが摩耗するくらい書いた。
自分の書きたいことをじっくり書けるからだと。
Facebookでの私は立場というものを考慮しての発言が多く、ここでは立場も何も関係なく書けることが非常に楽しいのである。
ただ読んでいる方が楽しいか否かは別として。

私はこれでも建前上は正直を旨とする立場にいて、実際は要領を旨としているのはナイショだとしても、前の記事に小西美術工藝さんのことを別段で書くと宣言したので、約束通り修復技術の伝承という点を含めて書いてみたい。
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文化財修復に関わる技術者で、一番先に処遇がシステム化されたのは通称『屋根屋』さん達である。普通に考えて建造物や収容物に悪影響を与える自然現象は雨であり、雨漏りから深刻な影響を及ぼした例も多い。そして文化財建造物で一番傷みやすいのも屋根である。
なので屋根修復の資材・人材確保は優先されて行われ、檜皮を立木から採取する原皮師の最年少が70代の年寄りだという状況を改善し、多少遠い山の中からでも原皮を搬出出来るようになった。これで資材の確保には目途がつけられるようになった訳だ。
また屋根葺士は習得技術の程度によってランク分けされ、給料などの待遇にも差が出来て文化財修復に関われる職人の一定のレベルが担保されるようになった。
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ただこのシステムが他の職人達にもそのまま適用された訳ではない。
以前の記事にも書いたが宮大工や彩色の職人・左官などについてはまだ明確なシステムは存在せず、ようやく業界団体の連合会が立ち上がってシステムの構築に着手したばかりなのである。
だから年功序列で技量などは考慮されるものの、若干腕が劣ると思われる技師が現場に向かう場合も間々ある訳で。

そして誤解のないように書くが、これらの技師・職人達の数が足りているという事では決してない。慢性的な人材不足の面があることも御承知頂きたいのである。

私と多少の関係がある小西美術工藝さんの社長は、元ゴールドマン・サックスの金融アナリストだったデービット・アトキンソンさんである。彼が文化財彩色の老舗である小西美術工藝さんの社長になったのには色々な理由があるのだけれど、一番の理由が改革を求められたという事なのだ。
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職人の数に比して修復現場の数が多く、請け負った会社は2つ3つの現場を掛け持ちしているのは普通であり、当然腕の良い技師も掛け持ちをする事になる。そして1つの現場が竣功すると直ぐに次の現場に向かわないとならない。
なので一つの現場に対してこだわりを持って関わるという事が困難となり、仕事が右から左に流されてしまう事となる。
確かに1つ1つの事物に心血を注いで当たっている職人も居るには居る。但し絶対的多数ではないのである。

デービットさんは仕事を流す上下関係を改善するために定年制を設け、1つの現場を任せられる人材のみ残す反面、希望する若手への道を開いたのである。これについて古手の職人達からの反発があったのも事実である。
そして職人自らのチェックと職人頭のチェックの上に、社長もチェックするという3段構えの試験を通過することを義務づけた。職人に自らの仕事に責任を持たせるのと同時に、職人頭がきちんと後進の指導をしているかも試される訳である。
デービットさんは「会社として対価に比例する仕事をしてるかどうか」を判断していると言うが、これは既に崩壊している徒弟制度の再構築を試みているのだろうと私には思えるのだが。
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ネットではデービットさんが外国人であることを理由に「外国人が日本の文化財の何が判るんだ」と言う声や、「日本の文化財に触れるな」という意見を発する者もいる。それに対して「その意見を無責任に言った人達は、今まで文化財に対してどれだけの貢献をしたのだ」と私は問いたい。

余談だが彼は金融アナリストだった頃の1週間分の年収で働いている。
それは私利私欲で働いてはいないという事を証明しているのではないだろうか。

今のデービットさんのモチベーションは「将来小西美術工藝の仕事を見た職人達への挑発」ということである。

日本人としても負けられないではないか。



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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
>「日本の文化財に触れるな」

情けない・・・本当に何とも言えず情けない言葉ですね。私自身デービットさんの心意気や良しとする考えに賛成なのですが、かりに10億歩ぐらい譲って、日本の文化財は日本人で・・・という立場を認めるにしても(認めたくはないのですが)、ならばそのようにこの業界に外国人が参入できる状況を作ったのは何処の国民なのか・・・本当に情けない・・・
三友亭主人
URL
2017/09/26 18:30
> 外国人が日本の文化財の何が判るんだ

 外国人だろうが日本人だろうが、わかる人にはわかるのだ、ということですね。当然日本人でもわからない人にはわからないというのは、どこの国にもあてはまることでしょう。

 明治の頃、ほとんど屑同然に扱われ、ほこりまみれになっていた芸術品の価値を認め、再認識させた、眼力のある外国人の存在を忘れてはいけないと思います。
薄氷堂
URL
2017/09/27 21:20
三友亭主人さん コメント有り難うございます。

デービットさんは皆の注意を喚起するために、第一声は刺激的な表現をされる事が多いのです。しかし内容を聞いてみると、案外妥当な意見なんですよね。

時折「自惚れ過ぎるのは駄目だ」という発言をされますが、それが聞く人によっては「日本は駄目だ」という風に聞こえてしまうのだと思います。

既得権益に浸かっている方には耳の痛い事を発言されますし、話題の二条城管理活用については所有者の京都市に「もっと金を出せ」と言われてます。

発言の内容を冷静に理解できない人がどこにでも居て、無責任にネットで意見を垂れ流してるのは問題だと思いますね。
Nori
2017/09/27 23:20
 薄氷堂さん コメント有り難うございます。

 仰有るように明治初期の廃仏毀釈の時代に、有名な寺院の国宝・重文建造物が二束三文で転売されそうになった経緯があります。そして実際に破却された建造物もあります。
 建造物からしてそんな状態でありましたから、仏像や仏画などは推して知るべしですよね。そしてその価値を日本人に再び知らしめた外国人が居た訳です。

 最近は神社仏閣をお詣りするのが流行っていて、文化財に対する興味を持つ方が増えてきたのは結構な事だと思います。ただそれの保存管理には如何なる技術的・金銭的努力が払われているかに思いを致す人間は少数です。
 
 文化財価値を知っていて保存管理の手法も解っている方というのは、日本人でもごく限られた数しか居ませんし、外国の方がそれの中にいるというのは本人の感性だけでなく、知識の蓄積にはらわれた努力は尋常ではないという事でしょう。

 今私が一番の問題だと思うのが、文化財所有者達の認識と覚悟の甘さです。
 
Nori
2017/09/27 23:38
案外、日本人が日本文化を十分にわかっていませんね。

一つ悲しいのは、文化財と言われるもの。
本来は信仰や生活に密着したモノであるはずなのに、いつの間にか本来のいのちを失って展示物に堕しているところです。神社仏閣にしても仏画仏像にしても、芸術である前に、文化財である前に、本当のいのちがあったはず。それを失ったのは、ほかなら日本人の精神なんですが。
根岸冬生
URL
2017/09/28 10:50
根岸さん コメント有り難うございます。

御存知でしょうが現在国宝である二条城の管理活用について、委員会の座長にデービットさんが就いておられます。
二条城の管理活用については恒常的な資金不足が問題となっていて、入場料を1,000円に引き上げるか否かで侃々諤々の議論がされています。デービットさんは遅々として進まない修復の原因は資金不足にある事を指摘して、日本の誇る国宝の塊みたいなものだから外国人旅行者から金を取るべきだと言われてます。

所有者は修学旅行の学生や市民にも負担がかかるから渋ってますが、一級の建造物や調度を見るに現在の価格は安すぎると私も思います。

仰有るように先ず寺院については生活に根ざした信仰があったのですが、京都の寺院の多くは宗教活動をほぼ行っていません。収入の多くは拝観料に頼っている状態です。
神社はまだマシで拝観料など取っている場所は少なく、宗教活動で収入を得ていますが、このまま行けば神事なども博物館の展示ケースでしか見られない状況になるのではないかと危惧されています。

それどころか京町家も大方破壊されて、そこいらのニュータウンにあるような家ばかりとなり、京都の風情が著しく損なわれているのは非常に問題があると思うんですけどね。
Nori
2017/09/28 11:20

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